観術総合研究所 - 代表・内海昭徳(うつみあきのり)-

ひとり一人の尊厳性と可能性が花開く、尊厳社会へ

年次改革要望書、TPP、アベノミクス、そして…。

今日は、福岡市長選挙の立候補者、大川ともゆきの「教育革命による尊厳CITY福岡」構想のステップ3、「福岡の基軸産業の創造とブランド化の推進」についてです。

今日はちょっと、えっと驚く話になるかもしれません。

じっくり読んでいただけたら嬉しいです。

 

本人の公式ホームページの政策発表資料ではこのように書かれています。

 

「未来技術審査委員会」で認定された未来技術に対して、産官学民の強みを活かした協力体制により新産業創造支援を行い、福岡市の基軸産業としてのブランド化を推進します。同時に、新たな雇用の創出と財政再建にもつながる産業構造の構築を検討、実施します。

 

市長選のひとつの争点としてよく聞かれるのは、市債残高2兆4000億円を越える福岡市の財政状況の中で、どのような政策を打つのか、ということですね。

 

福岡市を一人の人間の財布でみれば、入ってくるお金、出ていくお金の「入ったり、出たり」というバランスが崩れ、出ていく方ばかりが膨張して、借金体質がどんどん形状記憶して、借金で財政がパンパンになってしまっている状態です。

 

この状況を生み出した政治は、長年に渡る福岡市の行政と、市長、市議会の中核を担ってきた自民党政権に最大の責任があることは客観的事実として明らかだと思います。

 

高島市政である程度市債残高を減らすことに成功していると発表されていますが、引き続き、福岡市の財政改革は長期的な課題として取り組まなければいけません。

 

原理原則からみれば、出て行くお金を減らす、入ってくるお金を増やす、というシンプルなことで、ではそのためにどうやって出て行くお金(歳出)を減らし、入ってくるお金(歳入)を増やすのか、ということになります。

 

歳出については家計や企業経営と同じで、無駄なところにお金を使わずお金の使い道を整理するという、事業仕分けと予算の再配分、そして、ちょっと無駄な出費は切り詰めようよ、というコストカットが基本と思いますので、これはもう出来る限りいろんな利権や欲得、しがらみを排して地道にやるしかないのでしょう。

 

ただ、予算が配分されていたということは、その予算配分が仕事となり、収入に転化していた人が当然いるわけで、それが財政改革においてのいわゆる抵抗勢力既得権益層ということになります。

 

ひとつひとつ粘り強く対話しながら取り組むしかないと思いますので、歳出については原理原則論だけで終わりにします。

 

さて、問題は入ってくるお金、歳入をどう増やすかということですよね。

個人にとっても、企業にとっても、これがカンタンに出来れば苦労はしません。

雇用創出、新産業創出、新成長戦略、等々いろいろと言われます。

 

今回の福岡市長選でのひとつのポイントとしては、安倍自民党政権が進めるアベノミクス成長戦略と直結している、「国家戦略特区」についてです。

 

これについては以前のブログでも少し触れたことがありますが、今日は福岡市の中の政策的争点という観点から、大きく幅を広げて考えてみたいと思います。

                                                                                                                

一般的にほとんど知られていないと思いますが、国家戦略特区安倍政権のオリジナルのアイディアではありません。

当然、福岡市でもなければ高島現市長でもありません。

 

もともと出所はどこかというと、実はアメリカ政府なんですね。

これは明々白々な事実として、陰謀論でも何でもなく、今でも誰でも確認できます。

 

どこで確認できるのかというと、米国大使館のホームページ上です。

http://japan2.usembassy.gov/j/p/tpj-jp0260.html#商法概要

 

2002年のアメリカ政府から日本政府に出された「年次改革要望書」の中に、はっきりと書いてあります。

該当箇所は以下です。       

じっくりお読みください。

 

  1.  構造改革特区特区

 米国政府は、日本政府による構造改革特区導入計画を注視している。規制緩和構造改革に向けての、こうした新たな取り組みが効果的に実施されれば、日本が持続可能な成長路線に復帰するための重要な機会となる。日本がこの計画を推進するに当たり、米国は以下のことを提言する。

II-A. 特区が透明な形で選定され、導入される。

II-B. 競争促進のカギとなる市場参入機会の拡大に焦点を当てる。

II-C. 国内外の企業双方が、特区内で事業展開できるよう非差別的なアクセスを確保する。

II-D. 構造改革特区推進本部は、特区の効果を見極めるため透明性の高い点検メカニズムを構築する。

II-E. 類似した分野を対象とする特区構想の認定には制限を加えないという理解のもと、特区を創設する。

II-F. 特区内で成功した措置については、可及的速やかに全国規模で適用する。

 

今の安倍政権が進めている特区戦略、そして福岡市の特区構想そのままです。

ちなみに2002年は、日本は小泉政権です。

 

このページの冒頭には、このように書いてあります。

こちらも飛ばし読みせずにぜひ読んでみて下さい。

 

 経済成長の促進を目的としてブッシュ大統領と小泉総理大臣が設置した「日米規制改革及び競争政策イニシティブ」(改革イニシアティブ)は、今年で2年目を迎える。

 米国は、日本が意味ある経済改革を達成するため努力を継続していることを歓迎し、小泉総理大臣が国会で表明した「聖域なき構造改革」を断行するとの公約や、「あらゆる分野において規制改革を大胆に進める」との決意に勇気づけられている。米国はまた、日本政府が2002年3月29日に「規制改革推進3か年計画(改定)」を閣議決定したことを歓迎するとともに、日本政府の構造改革特区導入計画を関心をもって見守っている。

 本要望書に盛り込まれた提言は、主要分野や分野横断的課題にかかわる改革措置を重視しており、日本経済の持続的な成長路線への復帰と日本市場の開放を促すものとなっている。さらに、米国は、通信、情報技術(IT)、医療、エネルギー、競争政策など、小泉内閣が改革に重要であると位置付けた分野の問題に焦点を当てた。

 

 

いったいどういうこと?と思う方がいるかもしれませんね。

 

私の解釈ですが、シンプルに言えば、アメリカの要望、もっとダイレクトに言えばアメリカの経済的勧告にそって、それを具体的に政策化しているのが「国家戦略特区」の実態である、ということです。

 

上記にもある、小泉政権時代の「聖域なき構造改革」や「あらゆる分野において規制改革を大胆に進める」という方針は、表現こそ若干違えど、実質的には今の安倍自民党政権の経済政策、新成長戦略の方針と同じことです。

いいかえれば、安倍政権は、当時から数えて12年目の、小泉政権の焼き直しであるとも言えます。

 

構造改革によって日本を変えると喧伝された小泉政権から10年以上、日本はどのように変わったのでしょうか。

 

経済的な側面でみれば、アメリカの市場原理主義的な経済理念にのった小泉政権構造改革は、大きな貧富格差、富の二極化をもたらす結果になっています。

 

現在進行形のアベノミクスも、株価が大きく上昇した事実はあるものの、消費税増税の影響も併せて消費者物価指数は上がり、逆に消費者支出は増えておらず、むしろ減ったりしています。

 

ようは、金融業と大企業にはお金が流れているものの、一般庶民には生活が豊かになるのとは逆に、じわじわと暮らしに圧迫がかかってきて生活が苦しくなっている状態なのです。

このまま突き進めば、この格差は広がり続け、さらに深刻な事態になっていくのは間違いないと思います。

 

これに加えて、安倍自民党政権が元々の主張をかなり隠蔽して歪曲しながら交渉に参加している、TPPへの参加の問題があります。

 

TPPについてはまた別途まとめて書いてみたいと思っていますが、2008年に鳩山政権時に廃止された年次改革要望書からさらに一歩踏み込まれたものであり、日本経済のみならず日本社会と広い意味での日本文化にまで甚大な悪影響を与えるものだと私は思っています。

 

明治の日本が、アメリカの黒船の力の威嚇による砲艦外交で国を開き、不平等条約を結ばれたこと以上に、直接的には目に見えませんが、軍事戦争ではなく経済戦争として、日本が経済植民地化されていく危険性が非常に高いものです。

 

年次改革要望書、TPP、その流れの中でのアベノミクスの経済政策であり、規制緩和であり、その一部分としての福岡市の国家戦略特区、という風に、視野を広げて全体像を捉える必要があるのです。

 

もっとシンプルに大づかみで世界レベルの構造で言うならば、世界のグローバル金融資本主義の暴力に、完全に福岡市政が巻き込まれてしまったということです。

 

じっさい福岡市の国家戦略特区は、外国人労働者の受け入れ緩和につながる措置や、労働規制緩和という名の下での雇用の不安定化、雇用の流動化をもたらす危険性があり、長期的に見て、地場産業、地域産業に与える影響も深く考慮しなければいけないものだと思います。

見方を変えれば、外国人労働者の受け入れによる労働コストの削減は、相対的にみて日本人の賃金の低水準化と失業につながる危険性もあるのです。

 

国家戦略特区にはこういう問題点や危険性が内在されていますが、安倍自民党政権も高島現市長も福岡市も、こういった懸念に対しては特に何もコメントしていないように思います。

むしろ、企業活動が促進され、新たな雇用や産業競争力が伸びて福岡市の成長につながるというプロモーション的な表現が多いように感じます。

 

上記の要望書の最後には、以下のようにも書かれています。

II-F. 特区内で成功した措置については、可及的速やかに全国規模で適用する。

 

つまりこれは福岡市を最初の実験的都市として、同様の経済改革を日本全体に広めたい意志がもともとあるということです。

 

であればなおのこと、この国家戦略特区の是非についてはもっと深く広く、透明な情報公開のもとに議論され、市民のコンセンサスを得るべきでしょう。

 

漠然とした期待感のもと、トップダウンで押し進められるこの政策が、福岡市の未来と日本の未来を暗い雲で覆い尽くすことを私は深く危惧します。

 

細かく書くときりがないので、最後に、大川さんが掲げている福岡市独自の基軸産業のところに戻りましょう。

 

アメリカのグローバリズムの実態も深く洞察し、アベノミクスの実態も深く洞察した上で、本当に人間の尊厳が守られ、福岡市、地域、地場産業のためになる産業構造、そして、日本の尊厳を守ることができる産業構造を模索しなければならないと思います。

 

そのために、未来技術審査委員会を活用しながら、「尊厳」という哲学性を土台にして、お金の価値ではなく人の価値に重きを置く地域密着の経済発展モデルと、福岡•日本オリジナルの雇用、産業創出に向かうステップを踏んでいく必要があります。

 

教育革命を掲げる大川さんの基本方針からすれば、福岡市独自の基軸産業はもちろん教育産業が土台になると思いますが、具体的にどのようなブランド産業が生まれるにせよ、それが弱肉強食の新自由主義、金融資本主義の枠の中にからめとられているものであったならば、本当の意味で福岡市と福岡市民の未来を明るく照らすものではないでしょう。

 

大川さんは人間の尊厳性を土台にした人本主義経済の理念を謳っていますが、

資本主義をどのように越えるのかという大きな視野と都市ビジョンが欠落したテクニカルな経済政策論争ではなく、もっと本質深くからの議論が活性化していくことを、心から望んでいます。

 

だいぶん長くなりましたが、今日も最後までお読みいただいてありがとうございました!