『みんなの夢がかなうハイパーコネクション都市 −わくわく尊厳シティ−』未収録の第七章
《4》終わりなき衝突と闘争の歴史
「歴史を省みれば、人種、民族、国家、宗教、性別、出生、身分、財産、権能などの相対的差異から必然的に生ずる怨恨と不和衝突は、人間社会の万人を終わりなき苦悩と闘争状態に置き、そして変わることなき悲壮なる歴史を現出させた。」
脳の観点は、部分と違いだけを認識します。全体、共通、完全、無限の世界を認識することはできません。
世界は、違いに溢れています。不和の原因、衝突の原因は本質的にみれば、相手と同じではないから起こる、という実にシンプルなものです。
白人、黒人など人種の違いによる人種差別は、二十世紀後半に入るまで世界的に当然のことでしたし、今でもその問題は根深く残っています。
民族の違いは文化、習俗、生活様式など、それに付随するさまざまな違いと反発を生み出し、異文化相互理解は口でいうほど簡単なものではありません。
国家の違いは国家主義からくる反目や対立、戦争にもつながり、日本が置かれている東アジアの主要な国家間関係だけをみても、なかなか協調に向かうのは難しい現状です。
宗教は、教祖や教義に対する絶対性がかなり強いため、その違いが大きな衝突を引き起こしてきましたし、イスラム教とキリスト教の対立は収束する道が一向に見えません。
性別は、男女の違いによる差別が近年まで世界的にみても当然のようにありましたし、今も根強くあります。フランス人権宣言でいう人権も男性中心のものでした。
出生の違いは、その国、その地域、その家系に生まれたからというだけで、大きな差別の種でした。今の日本をみても同和問題なども根強く残っています。
身分の違いは、基本的には封建主義が崩れることでかなり弱まりましたが、まだ世界的にも残っていますし、資本主義社会特有の富による身分の違いも生まれてしまいました。
財産は、大きくみれば先進国と後進国の違いもありますし、生まれによる違いもあります。自由競争社会による凄まじい貧富の格差は是正しようがない状態に陥っています。
権能の違いは、身近な共同体から世界全体まで共通した課題で、権力、権限、能力など、後天的に社会状況の中で徐々に固定され、ピラミッド構造の支配体制を生み出します。
こういったすべての違いは、違うもの同士が出会い、交流する中で、必然的にさまざまな摩擦衝突を生み出しました。それは真実のひとつの観点から本質的にみれば非常に意味のある出会いの意志と進化成長の意志でもあるのですが、現象としては終わりなく苦しみや悲しみを生み出し続ける根本原因になりました。
人間は、観点に支配され、分離断絶された無数の違いに溢れる世界の中で、まさしく万人の万人による闘争状態を必然的な宿命として背負わされた存在なのです。
そして、その違いをなくし、万人が等しく平等にひとつになる社会も理想として幾度も試みられましたが、根本問題の正確な診断と処方策を持っていなかったために、結果的には失敗に終わり、さらなる問題や惨劇にもつながりました。
現象世界の中で平等を求めるのではなく、観点をほどいたところで真実のひとつの世界による絶対平等に気づく時、すべてはひとつであり、ひとつはすべてであり、部分であり全体、個であり場である、という上昇した観点とアイデンティティを持つことができるようになります。
多様な違いから生まれる人間社会の不和衝突を静めるためには、悟りの知恵を現実に科学的に活用できる新しい教育が必要なのです。